「素朴な願ひ」

雑談の多い先生だった。その話のいくつかを今でも覚えている。

今のように簡単に本を作ることができる時代ではなかったあの頃、彼は歌集を出版していた。

本に書かれている歌と実際に学校で接している本人との印象の違いに、とても驚いた。しかし、どちらも偽りではなかった。この驚きは、人は多面的で複雑であることを、今も私に思い出させてくれる。また、これらの歌が自身の心を深く見つめる過程を経て生まれてきたであろうことに気付けるほどの経験や想像力を当時の自分が持ち合わせていなかったことを、つくづく残念に思う。

「誰にでもわかる授業をしたいといふ そんな素朴な願ひをもって」

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の理念「誰一人取り残さない-No one will be left behind」を聞いたとき、この歌と先生を思い出した。私は優秀な生徒ではなかったが、日々このような思いを抱えて授業をしてくださった先生に感謝している。

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